【新春エンタメざんまい】透明感と官能 村上春樹の世界を緻密に映像化 (1/2ページ) |
(12月公開予定)
今年12月公開予定の邦画で、早くも大きな話題となっているのが「ノルウェイの森」だ。原作は昨夏、1000万部を突破した村上春樹の大ベストセラー。撮影は昨年で終わり、現在は編集作業が進められている。主演は松山ケンイチと菊地凛子。人気、実力とともに旬の俳優陣に加え、フランスのトラン・アン・ユン監督が小説の時代背景を日本でほぼ忠実に再現したという点も見どころだ。撮影現場の一日を通じて、その映像世界をリポートする。(堀晃和)
「七人の侍」など数々の名作を生み出した伝統の撮影所を訪ねたのは、梅雨入り後の雨の日曜日だった。昨年6月21日、東京・成城の東宝スタジオ。広い敷地を横切り、現場を目指す。傘をたたみ、スタジオの1棟に入ると、そこでも“雨”が降っていた。
この日の撮影は、主人公のワタナベ(松山)とガールフレンドのミドリ(水原希子)が、2階ベランダで語り合うシーン。手すりの外では人工の雨がセットをぬらしている。複数の照明の効果で、雨の日の柔らかな光が見事に再現され、2人の繊細な心の動きが浮かび上がる。
カメラが止まった。一呼吸置いたあと、「テイク3」のアナウンス。続いて「アクション!」とトラン監督の声。再びカメラが回り始める。「お母さんが死んだときのことなんだけど」。水原がセリフを言い終えたところで、監督が「カット!」。話し始めるタイミングが微妙に違うようだ。
このあとも、「アクション」と「カット」の声が延々と続く。途中、監督が水原をモニターの前に連れていき、「最後までワタナベを見なさい」「胸の中に火が燃えているような話し方を」と厳しく注文。さらに2人の位置を細かく調整していく。
|
|
|